2000/08/20

    人はなぜ,波に乗りたがるのか?
                     by みやさん
       かなり長文なのだが読んでたら「うんうん!」とうなずかされたぜー。



 サーフィンを始めた頃からずっとかんがえてた。
 そう言えば、僕は色んな物に乗ってきたなあ。

 ガキの頃、デパートの屋上にあったアンパンマンに乗ったのに始まり、(百円入れると動くやつ。)
 オートバイ、スノーボード、スピード違反でつかまった時はパトカーの後部座席にも乗らされたし、
 そして時には女の子にも。

 それぞれの年代に乗ったこれらのものは、当時の自分にとってはものすごくエキサイティングで
 アドレナリンが、バシバシ出た。

 でも、今はそれらのどれにもあまり乗リたいと思わないだんよね。(女の子は別)
 よく日本人は熱しやすく冷めやすいと言われるけど、僕も典型的な日本人なんだなあ。

 でもいまからら7年前、いまでもやめられそうに無いどころか、どんどん深みにはまっていく
 乗り物に出会った。職場の先輩いわく、「絶対女にモテルから」と3万円で譲ってもらった乗り物、
 それは

  一枚の「サーフボード」だった。

 海に行く前、サーフビデオも見てみた。
 「なんだ簡単じゃん。」  ・・・むかしから、物事をなめてかかる私。
 
 初めての海では、まともにパドリングもさせてもらえず僕の事を海に振り落とす。

 「おかしい、ビデオと違う・・・。」

 波に巻かれ,塩辛い海水をしこたま飲みこむ!。
 海底に足が全くつかない恐怖にも耐えられなくなってきた!。

 結局一本も波には乗れず、浜にあがったとたん、
 強風にあおられたボードが、ぼくの前歯にフライング ボディアタックをかましてきた!。

 流血+半泣き状態、そして前歯を失った。これが僕の海デビューだ。

 そんなひどい目に遭ってもなぜ、海通いを続けたのか?。
 それは多分、ボード代3万円という出費と、その先輩の言っていた、
 「サーファーは女にモテる」と言うセリフが僕を支えたのだろう。
 しかし、スープを捕まえては立つ練習を繰り返していくうち、
 そんな事はどうでも良くなっている自分がいた。

 そう、サーフィンの持つ魔力に完全にハマったのである。
 そのハマリ度はサーファーだったはずのその先輩が、女にモテないどころか、
 二十代も半ばにして「実は童貞だったらしい」と言う噂を聞いても、
 全く動揺しなかったほどだった。
 (余談だが、サーファーを辞めた先輩はその後、かなり美人の奥さんをつかまえた。)

 それから海の近くにアパートを借り、月の半分は海に通う両生類の生活を続ける中で、
 陸上生活では気づかなかった事を知った。

 晴れた日にオフショアにあおられた波が、見事な虹を作る事。
 トイレ(小)は波待ちの時にするものだと言う事。
 普段は優しい表情の海が、時には恐ろしい表情に変わり、人の命をも奪う事がある事。
 人間の無知やエゴによる環境破壊やサーフポイントの消滅。

 そして、初めての北カリフォルニアサーフトリップでは、波待ちしてる時、
 ラッコが意外にでっかい生物なんだということも知った。(昔、家で買ってた犬くらいの大きさ)
 テレビで見たとおり、ハラに石を乗っけてカチカチと貝を割ってるんだな、これが。

 こんな色んな発見がある乗り物に、なんでもっと早く乗らなかったんだろう。!


 「なぜ人は波に乗りたがるのか?」

 僕の7年間のわたる分析によると、人によって原因,動機は様々。 
 しかし、彼(彼女)ら共通の症状は、
 「もっともっと波に乗りたい,海の神様よ!もっと俺(私)に波をくれ〜 !。」
 ・・・さながら「波中毒患者」。  
 僕はこれを「波乗り願望シンドローム」と呼ぶことにした。

 そして、現在僕の「波乗り願望シンドローム」の症状はますます悪化の一途をたどっている。

 仕事の日、NHKの天気図を見て、有休を取らなかった事を本気で悔やんだり、
 そんなときは、ふと海がえりの友達に不幸のメールを出していたり。

 一週間以上海水につからないと 、会社の廊下の壁が、波のウォールに見えてくる幻覚に
 襲われたり、そして気づくと、その壁にボトムターンをしかけてる自分がいたり、
 それを上司が白い目で見ていたり。

 いっそのこと、毎日波乗りが出来る場所に引っ越そうか?。
 でも、「毎日そんなに波乗りして、もし指の間に水かきが出来たらどうしよう?。」とか、
 本気に心配をしてみたり。

 そんな、こんなで7年間考えながら、気づいた事。

 波乗りは人生に似ている。

 始めは何もわからない赤ん坊が、荒波を乗り越え成長していく。
 ちょっとうまくなると食べ盛りのガキのように他人などかえりみることが出来ずにガツガツ乗って、
 人の波までスネーキングしてみたり。
 でも、ポイントを共有する他のサーファー達とぶつかって、友達になって、学び合って
 波乗りとは技術が全てじゃないんだと気づいたりして、
 お互いを「リスペクト」できる大人のサーファーに成長していく。

 そんな大人のメンタリティを持ったサーファーが増えていけば、
 ローカル対ビジターなんていう難しい問題も、きっと僕達自身で解決していけそうだ。

 サーフィンは本当に奥が深いスポーツ。
 なかなかうまくいかないし、この技が出来ても、「もっときわどいところで!」とか、
 うまくなればなるほど自分の課題が見えてきて 、今のところ終着点が見えそうにない。

 今から10年後、20年後、ぼくはいったいどんなラインを波に刻んでいるんだろう。

 そしてその頃、僕の「波乗り願望シンドローム」は少しは治癒してるだろうか?




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