2002/09/01
サーファーのおつまみ
by Denis!

台風直撃のある日、千葉の某ポイントで入った。
普段はローカル&おじさま専用みたいなこのポイント。
午前中はやはりその通りであったが、午後になっておじさま達も減ったので
「これなら平気?」なんて思って入らせていただいた。

ゲットアウトから1本目。
とりあえず回りのライディングをチェックしてプロ級な奴がいないことを確認。
ここで一発すげーの決めれば俺のリズムだっぜーだなんて考えながら、
頭程度のうねりに標準を合わせてパドル開始。
ケツが上がって「よっしゃー!」なんて思ったらなんてこったい!
予想できない巻き方にまっさかさまに飲まれた。
 
「うっ、うっわーー!!」
先に落ちたはずのボードが跳ね返ってきて右頬にレールが
ドカッ!
脳内ゼリーがブルブルいっちゃっていろんな物体が見えた。
 
「痛ぇぇぇぇーー!」
隣にいたショートが横目で見て微笑んでる。
牢屋で言ったら隅っこの方、ピークで乗るおやびんには逆らえなくなった。
ちっ!その日の俺は格下に決定だ。

「ちきしょー。だいたいロングはインサイドなんかでやっちゃいけねーぜ」
と思いアウトを見るとデカイのが・・
「よーしあれに乗っちゃる」なんて思ってパドル開始。
何で誰も乗らねーんだろう? ふんっファンサーファーめっ!

着いてみてびっくり

 
で〜〜か〜〜す〜〜ぎ〜〜る〜〜!!!!

波待ちしてるだけなのにすげー上下運動。
波情報風に言うと「オーバーヘッドかそれ以上、セットでダブル・・」 ブルブル・・
「マズイ所にきちまったぜ・・」 さきほどの強打でかなーり弱気。

が、来てしまったものは仕方ねー。サーファーたるものお帰りの際は波に乗って・・
そんな時ちょうどよさげな波がやってきた・・・と言ってもデカイけど。
意を決して
テイクオフ
9’4のボードが下を向く、立った瞬間「G」がかかって急降下ぁぁぁぁ!
波のパワーで食い込んだはずのレールがはじかれるはじかれる・・Nooooooo!!!!
でも乗れた。 途中で厚くなっちゃってプルアウト。 いえーい いえーい♪

 「これは愉快♪愉快♪」 な〜んて思ってたらアウトに超特大アーチが・・
ひっ!?

高速パドルもむなしく思い切りリップに巻き上げられ天に向った。。
パヒッ! なんてリップに当たる音の後に小さな静寂が・・・高さにして恐らくダブル。
自分の板を空中で放り投げ最悪の事態を避けようとしたが「この状況」自体がすでに最悪。
高校以来ごぶさたののバック中を披露しながら空中から輝く水面をみつめた・・。
 ウガァァァァァァーー!

一回転半の後、腰あたりから着水。 ゴボボボボボボ・・
1秒ほど遅れて物凄い爆音と共に何十トンもの水が襲いかかってきやがった。

 ドッキューーーーン・・・グボボボボボボボボボボボ・・・・

過去にあれほど高速で海中を回転する物体は恐らく俺と魚雷くらいだろ。
溜め込んだ空気をもらさないように手で口を抑えてなすがまま・・・
 ンゴォォォォォォォォxx−− ・・・ 
なっげーよっ! 死ぬーーーー!!!!
その時突然右腕を引っ張られた。
リーシュが右腕に巻きついて凄い勢いで引っ張られる。ウォォォォォxx−−
体に感じる水圧でここが相当深いことがよく分かる。
脳内CPUが最高速で回転して空気残量と生存確率を割り出した。
「ノコリ20%、アトスウビョウデゲンカイ・・・ゲンカイ・・サンズノカワガ見えマ・・」

勢いがおさまり海底を感じた・・おもいっきり底を蹴って平泳ぎ開始!
1回・・・・・2回・・・・3回・・・・4回・・・・
がばーーーーーーっ! 
ハァーハァー・・ゲホッ!ゲホッ!オエー!

まじ死ぬかと思った。。。
まじ死ぬかと思った。。。
まじ死ぬかと思った。。。

急いでボード引き寄せてピークからはずれようと横にパドル。 ゲホッ ゲホッ
遠くで殺人ウェーブがマキマキしてる。。
魔太郎みたいなヘアースタイルでしばらく呆然としてた。
穴という穴から変な水がたれてきてとても女の子には見せられない。
よく見りゃ粉々になったクラゲの死骸があちこちに。。。。。

 「に・・・・・にげよぅ・・・

波の小さいところ狙ってパドルして最初の所に戻った。
カウンターパンチもらった最初の波がやたら小さく感じたよ。
それに乗って岸にたどり着いた。
ボード抱えて振り返ったら脚が
ガクガクいってやがる。。 「怖かった・・」
久々に味わった「恐怖」の二文字。 死を直感した時のあれったら・・・・。

砂浜歩きながら真っ赤に腫れあがった頬抑えてこう思った。

 「海はデカイ・・・・そして俺は小さい・・。」

大げさだけどこうも思った。

 「生きて帰れた。ほんと感謝しますっ!」

うまく乗れてないし、ちっとも格好いいとこなかった。
顔は腫れてるし脚はガクガク。
腕はビリビリしびれてるし鼻水はダラダラ。
駐車場に着いたらこれから入ろうという人達が何人かいた。
俺はなぜかしらんがとても誇らしげにボードを置いた。死にかけたくせに・・。

 
満足 満足

チャレンジしたんだ。
結果はどうあれチャレンジしたんだ。
そして生きて帰ってきた。
それを「誇り」に思えるのがサーファーじゃん。



な〜んてな。



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